化粧水の成分表示に「ヒアルロン酸」という文字を見かける頻度は高いと思います。ただ、なぜ保湿にいいとされているのかを説明できる人は、そう多くないかもしれません。
今回は、ヒアルロン酸が肌の上で何をしているのかを整理します。
なぜ水を抱えられるのか
ヒアルロン酸は、糖が鎖のように長くつながった構造をしています。この鎖の間に、無数の水分子を取り込むことができます。よく言われるのが「1gで6リットルの水を抱えられる」という数字です。実際の化粧水にはごく少量しか配合されていませんが、それでも水を抱える性質そのものは変わりません。
もともと肌の角質層や真皮にも存在する成分です。まったく新しい物質を足すというより、肌にすでにある仕組みに近いものを、化粧水を通じて補っているという位置づけになります。
分子の大きさで、働く場所が変わる
化粧品に使われるヒアルロン酸には、いくつか種類があります。分子が大きい高分子タイプは、角質の奥まで入り込みにくいぶん、肌の表面に薄い膜を作って水分の蒸発を防ぐ方向で働きます。
一方、分子を小さくした低分子タイプやナノ化タイプは、角質層の内部まで入り込みやすくなります。真皮まで届くわけではありませんが、角質層の中でうるおいを抱える働きが期待できます。
| 種類 | 分子の大きさ | 肌でのはたらき |
|---|---|---|
| 高分子ヒアルロン酸 | 大きい | 肌表面に膜を作り、水分の蒸発を防ぐ |
| 低分子ヒアルロン酸 | 小さい | 角質層の内部まで入り込み、うるおいを抱える |
| ナノ化ヒアルロン酸 | さらに小さい | 角質のすみずみまで行き渡りやすい |
化粧水にはこれらが単独、または組み合わせで配合されていることが多いです。「ヒアルロン酸」とひとことで書かれていても、中身は一種類とは限りません。
化粧水だけでは、乾燥を防ぎきれない
ヒアルロン酸がどれだけ水を抱えていても、化粧水そのものはほとんどが水分です。そのままにしておけば、時間とともに蒸発していきます。化粧水を重ね付けしても夕方には乾燥を感じる、という人は、化粧水の量ではなく、そのあとに何を重ねているかを見直すほうが早いかもしれません。
乳液やクリームで油分のふたをすることで、抱えた水分を肌にとどめやすくなります。ヒアルロン酸は「水分を与える」というより「水分を抱えられる状態を作る」成分で、そのあとの工程とセットで考えるものです。
効果は、使い続けている間だけ
ヒアルロン酸は角質層に水分を留める働きをしますが、肌が自分で作るヒアルロン酸の量そのものを増やすわけではありません。使うのをやめれば、数日のうちに元の状態に近づいていきます。使ったその日から違いを感じやすい一方、蓄積して効いていくタイプの成分ではないということです。
たっぷり抱えられることと、抱え続けられることは、別の話です。
化粧水の役割は、水を与えることそのものではありません。水を抱えられる状態を作ることです。そこが分かれば、次に見直すべきはヒアルロン酸の量ではなく、そのあとに何を重ねるかだと気づけます。
Grain Note
抱えられる量より、抱え続けられる状態を作ること。
ヒアルロン酸は優秀な保湿成分ですが、それだけで乾燥が終わるわけではありません。化粧水のあとに何を重ねるか。そこまで含めて、ひとつの保湿だと考えています。
Grain Evidence
肌でのヒアルロン酸の存在と浸透性の研究
ヒアルロン酸は角質層や真皮に存在する成分で、高い保水力を持つことが知られています。分子量の大きいヒアルロン酸は角層内部まで浸透させることが技術的に難しく、化粧品メーカー各社が浸透性を高める研究を続けています。
皮膚のヒアルロン酸に関する基礎研究
花王は肌のヒアルロン酸に着目し、40年以上にわたって研究を続けており、皮膚におけるヒアルロン酸の合成・分解のメカニズムを明らかにしてきました。



