10月に入ると、朝晩の空気が急に乾いてきます。頬がなんとなくざらつく、いつもの化粧水が少ししみる。そんな日が増える時期です。
SNSでは、この季節になるとドクダミの化粧水がまたよく流れてきます。韓国コスメの定番として知られるようになって数年経ちますが、人気はまだ落ち着いていないようです。
日本ではずっと身近だった草
ドクダミは、日陰の庭先や道ばたに生えるハート形の葉の植物です。独特の強いにおいがあるので、子どものころに触って驚いた記憶がある人もいるかもしれません。
日本では「十薬」とも呼ばれ、お茶にしたり、生の葉をもんで吹き出物に貼ったりと、民間薬として使われてきました。日本で行われた聞き取り調査でも、おできなどに葉を湿布する使い方が記録されています。
韓国コスメでは英語名から「ハートリーフ」と表記されることもあります。海外から逆輸入されたように見えますが、もともとは日本の暮らしにもあった植物です。
研究でわかっていること
ドクダミには、クエルシトリンやヒペロシドといったフラボノイドが含まれています。においのもとになる精油成分にも、抗菌作用があることが知られています。
肌の細胞を使った実験では、紫外線を当てたときの炎症物質や活性酸素がドクダミのエキスで抑えられたという報告があります。肌のバリアに関わるたんぱく質であるフィラグリンが増えたとする日本の研究もあります。
まだわかっていないこと
ここまでの研究は、どれも培養した細胞での結果です。今回PubMedで調べた範囲では、ドクダミ配合の化粧品を人が使って赤みやゆらぎが落ち着いたかを確かめた臨床試験は確認できませんでした。
細胞で起きたことが、そのまま顔の肌でも起きるとは限りません。化粧水に入っている量や、角層をどこまで通るかによっても変わります。
商品名の「77%」のような数字も、配合されているドクダミエキスの割合です。エキスそのものがどれくらい濃いかは製品ごとに違うので、数字の大きさが働きの強さを表しているわけではありません。
それでも選ばれている理由
ドクダミの化粧水は、香料やアルコールを控えた、さらっとした処方のものが多い印象です。人気の理由は成分そのものより、肌が敏感な時期にも使いやすい軽さにあるのかもしれません。
わたしも季節の変わり目に一本使ってみたことがあります。何かが劇的に変わった感覚はありませんでした。ただ、しみることがなく、朝に迷わず手に取れる気楽さはありました。
もっとうるおいがほしい日は、ドクダミの化粧水だけで済ませずに、乳液やクリームでふたをしてください。植物のエキスは体質によってかぶれることもあるので、初めて使うときは二の腕などで試してからにすると安心です。
Grain Note
庭先で見かける草が、遠回りして化粧水の棚に並んでいます。
流行の名前で選ぶ前に、どこまでが研究でわかっていて、どこからが使い心地の話なのか。その線を一本引いておくだけで、期待しすぎずに付き合える成分です。
Grain Evidence
ドクダミエキスと紫外線による細胞ダメージ
ヒトの表皮細胞(HaCaT)に紫外線(UVB)を当てた実験で、ドクダミエキスが細胞死を抑え、IL-6やIL-8といった炎症物質と活性酸素を減らしたと報告されています。主な成分としてクエルシトリンとヒペロシドが同定されています。細胞での結果です。
Charachit N, et al. Antioxidants (Basel). 2022;11(2). (PMID: 35204104)
フィラグリンの発現に関する研究
ヒトの表皮細胞を使った研究で、ドクダミエキスが肌のバリアに関わるたんぱく質フィラグリンの遺伝子発現を高め、活性酸素の発生を抑えたと報告されています。著者らは光老化やバリア機能が乱れた肌への応用の可能性に触れていますが、細胞での結果です。
Doi K, et al. Fukuoka Igaku Zasshi. 2014;105(11):205-213. (PMID: 25816564)
ドクダミの湿布と抗炎症・抗菌作用
日本で生葉の湿布が吹き出物などに使われてきたことを聞き取り調査で確かめ、そのエタノール抽出物が黄色ブドウ球菌の増殖や、細菌の刺激による炎症物質の産生を抑えたと報告しています。こちらも試験管と細胞での結果です。
Sekita Y, et al. Biosci Biotechnol Biochem. 2016;80(6):1205-1213. (PMID: 27023331)
Grain Pick
ドクダミの化粧水を一本試してみるなら、この流行のきっかけになった製品を見ておくと比べやすくなります。ドクダミ葉エキスを主成分にした、水のように軽いトナーです。
保湿はこれだけで足りると考えず、乳液やクリームと組み合わせてください。


