季節の変わり目になると、頬のあたりが赤くなりやすいと感じることはありませんか。触れていないのに、なんとなく熱っぽい。そんな時期です。
敏感肌用の化粧水や乳液の成分表示を見ると、グリチルリチン酸やグリチルリチン酸ジカリウムという名前を見かけることがあります。名前は難しそうですが、由来はよく知られた植物です。
甘草から生まれる成分です
グリチルリチン酸は、漢方薬にも使われる甘草の根から抽出される成分です。甘みの主成分でもあり、砂糖の何十倍もの甘さを持つことでも知られています。
甘草そのものは古くから炎症を鎮める目的で使われてきました。その中心的な働きを持つのが、このグリチルリチン酸です。
炎症を抑える仕組み
甘草由来の成分をまとめたレビューでは、炎症に関わる物質であるTNFやプロスタグランジンE2、活性酸素などを、複数の経路を通じて抑えることが報告されています。
一つの反応だけを止めるのではなく、炎症が進む道筋のいくつかに同時に働きかける。それが、この成分が長く使われてきた理由の一つです。
肌で試された研究
アトピー性皮膚炎の患者を対象にした試験では、甘草エキスを2%配合したジェルを2週間使ったグループで、赤み・むくみ・かゆみが1%配合のグループより軽減したと報告されています。
ここで扱われているのは治療を目的とした濃度の話です。日常の化粧水や乳液に配合される量は、これよりずっと控えめです。同じ成分でも、濃度が違えば期待できることも変わります。
同じ名前の成分でも、薬としての濃度と、日々のケアとしての濃度は分けて考える必要があります。
肌への届け方も研究されています
グリチルリチン酸は水にも油にも溶けにくく、肌の角層まで届きにくいという性質があります。近年は、成分を包み込む特殊な処方によって浸透性を高める研究も進められています。
成分そのものの働き以前に、どう肌に届けるかというところでも、まだ改良が続いている段階だといえます。
取り入れるなら、日々のケアとして
グリチルリチン酸は医薬部外品の有効成分としても長く使われてきた成分で、単体でのアレルギーの報告は多くありません。敏感肌用のシリーズに配合されていることが多いのも、そうした実績によるものです。
ただ、使ってすぐ赤みが消えるような成分ではありません。わたしは季節の変わり目にこの手の成分表示を見ると少し安心しますが、実際に肌が落ち着くまでには数日かかると感じています。
新しく試すときは、他の成分と同じように二の腕などで様子を見てから顔に使ってください。赤みが強く続く場合は、成分に頼る前に皮膚科に相談したほうがいい場合もあります。
Grain Note
甘草は甘さの成分であると同時に、鎮める成分でもあります。
効果を急かす言葉より、長く使われてきた実績のほうが、こういう成分については参考になります。赤みが気になる季節だからこそ、慌てずに選んでいいのだと思います。
Grain Evidence
甘草の抗炎症作用に関するレビュー
甘草に含まれる成分がTNFやマトリックスメタロプロテアーゼ、プロスタグランジンE2、活性酸素といった炎症に関わる物質を、複数のシグナル伝達経路を通じて抑えることをまとめたレビューです。550以上の承認薬に甘草成分が使われていることにも触れられています。
Yang R, et al. Pharm Biol. 2017;55(1):5-18. (PMID: 27650551)
甘草ジェルによるアトピー性皮膚炎への試験
甘草エキスを配合したジェルを2週間使用した二重盲検試験です。2%配合のジェルは1%配合のものより、赤み・むくみ・かゆみの軽減で優れていたと報告されています。治療を目的とした濃度での結果です。
Saeedi M, et al. J Dermatolog Treat. 2003;14(3):153-157. (PMID: 14522625)
グリチルリチン酸の皮膚浸透を高める処方の検討
グリセロールとエタノールを用いたリポソーム製剤(グリセトソーム)にグリチルリチン酸を包み込み、皮膚への浸透性を高める処方を検討した研究です。最適化した処方では、従来のリポソームより高い皮膚透過率が確認されています。
Zhang Y, et al. Int J Cosmet Sci. 2022;44(2):249-261. (PMID: 35303372)

