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アゼライン酸とは。毛穴・赤み・くすみとの関係を整理する。

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アゼライン酸とは。毛穴・赤み・くすみとの関係を整理する。

ここ最近、アゼライン酸という名前を化粧品の説明で見かけるようになりました。毛穴が気になる人にも、赤みが気になる人にも、くすみが気になる人にもすすめられている。守備範囲が広いぶん、かえって「本当のところ何をする成分なのか」がつかみにくいところがあります。急いで結論を出す前に、わかっていることから順に見ていきます。

もともと、肌にもある成分です

アゼライン酸は、炭素が9つつながったジカルボン酸という種類の成分です。大麦や小麦などの穀物にも含まれ、人の肌の上にも自然に存在します。まったく新しくつくられた成分というより、もとからあるものを化粧品や薬に使えるかたちにした、という位置づけです。名前の響きは強そうですが、出どころ自体はおとなしいものです。

なぜ、毛穴にも赤みにもくすみにも名前が挙がるのか

一つの成分が別々の悩みに顔を出すと、うさんくさく感じるかもしれません。ただアゼライン酸の場合、それぞれ違う経路に関わると説明されています。炎症をやわらげる方向に働くこと。酸化のもとになる物質を抑える方向に働くこと。そして、色素をつくる酵素チロシナーゼの働きを穏やかに抑えること。狙いが一つではなく、複数の入り口に少しずつ関わる。だから、結果として名前が挙がる悩みも複数になります。

気になることアゼライン酸が関わるとされる経路
赤み・炎症炎症をやわらげ、活性酸素の産生を抑える方向に働く
毛穴・ざらつき角の詰まりや常在菌に関わり、ニキビの研究で使われてきた
くすみ・色ムラメラニンをつくる酵素の働きを穏やかに抑えるとされる

ただし、「複数に関わる」ことは「どれにも強く効く」ことと同じではありません。入り口が多いぶん、一つひとつの作用はおだやかだと考えておくほうが、期待とのずれが起きにくいと思います。

一つで何にでも、ではなく、いくつかの入り口に少しずつ。そう捉えると距離が取りやすくなります。

海外での使われ方と、研究でわかっていること

海外では、アゼライン酸は酒さ(顔の赤み)とニキビの塗り薬として長く使われてきました。複数の臨床試験をまとめたレビューでは、酒さの赤みや炎症のあるできものについて、使わなかった場合と比べて改善が見られたと報告されています。くすみ・色ムラ(肝斑や炎症後の色素沈着)についても研究がありますが、対象や方法にばらつきがあり、酒さほど一貫した結論には至っていません。

効果が報告されている一方で、万能の成分というわけではありません。レビューのなかには、他の塗り薬と比べて明確に優れているとまでは言い切れないとするものもあります。「選択肢の一つとして確からしさがある」くらいの温度感で受け取るのが、いまのところ実態に近いはずです。

日本では、どう扱われているか

ここは押さえておきたい点です。日本では、アゼライン酸は医薬品としては承認されていません。海外のように「酒さの薬」「ニキビの薬」として薬局で買えるわけではない、ということです。国内では、化粧品に配合されたものか、医療機関で扱われるものとして手に入ります。同じ成分でも、国によって立ち位置が違います。

化粧品として売られているものは、医薬品と同じ濃度・同じ働きを前提にはできません。パッケージの言葉も、化粧品の範囲での表現になります。気になる症状がはっきりしている場合や、市販のもので合わなかった場合は、自己判断で強いものを探すより、皮膚科で相談するほうが遠回りになりません。

取り入れるなら、控えめから

まとめると、アゼライン酸は「一つで何にでも効く魔法の成分」ではなく、「炎症・酸化・色素という別々の入り口に、穏やかに関わる成分」です。海外では薬として使われてきた実績があり、日本では化粧品や医療機関を通して出会うことになります。もし試すなら、量と頻度を控えめに始めて、肌の様子を見ながら足していく。急がない成分だと思って付き合うくらいが、ちょうどいい距離だと感じます。

なお、赤みやくすみが紫外線と関わっているなら、日中の日焼け止めのほうが先です。アゼライン酸に限らず、攻めるケアは守りが整ってから足すほうが、遠回りに見えて結局は近道になります。

Grain Note

新しい名前を聞くと、それひとつで解決するように感じます。でも肌の悩みは、たいてい複数の理由が重なっています。

アゼライン酸は、いくつかの悩みに名前が挙がる成分です。だからこそ、期待をひとつに集めすぎないほうがいいと思います。守りを整えたうえで、選択肢の一つとして静かに試す。合わなければ引く。その行き来ができる余裕を持って付き合ってみてください。

Grain Evidence

酒さ・ニキビ・色素沈着をまとめたレビュー

43件のランダム化比較試験を対象にした系統的レビューでは、酒さについて、アゼライン酸が塗った基剤のみの場合と比べて赤みの程度や炎症のあるできものの数、全体的な改善を有意に高めたと報告されています。ニキビや色素沈着への使用についても検討されていますが、条件のばらつきがある点は割り引いて読む必要があります。

King M. "A systematic review to evaluate the efficacy of azelaic acid in the management of acne, rosacea, melasma and skin aging." J Cosmet Dermatol. 2023. (PMID: 37550898)

酒さ治療の系統的レビュー(GRADE評価)

酒さの治療をまとめたレビューでは、多数のランダム化比較試験をもとに、外用のアゼライン酸が選択肢の一つとして評価されています。エビデンスの確からしさをGRADEで評価しており、成分ごとに確からしさの度合いが異なることも示されています。個々の試験の質や対象の違いを踏まえた上での評価です。

van Zuuren EJ, et al. "Interventions for rosacea based on the phenotype approach: an updated systematic review including GRADE assessments." Br J Dermatol. 2019. (PMID: 30585305)

色素をつくる酵素への働き(基礎研究)

表皮を用いた基礎研究では、アゼライン酸がメラニン生成に関わる酵素チロシナーゼを競合的に阻害することが示されています。ただしその阻害は弱いものであると報告されており、くすみ・色ムラへの働きが穏やかであることの背景として参照できます。試験管・組織レベルの研究で、使用実感をそのまま保証するものではありません。

Schallreuter KU, Wood JM. "A possible mechanism of action for azelaic acid in the human epidermis." Arch Dermatol Res. 1990. (PMID: 2114832)