毎月おなじ時期に、おなじ場所が荒れる。あごやフェイスラインに小さなニキビができて、数日すると引いていく。生理前の肌荒れは、そういう繰り返しとして経験されることが多いと思います。
この時期の肌荒れは、たいてい「ホルモンの影響で皮脂が増えるから」と説明されます。それは間違いではありません。ただ、それだけだと説明のつかないことがあります。皮脂が増えているはずなのに、肌がごわついたり、いつもの化粧水がしみたりする。テカっているのに、乾いている感じがする。
調べてみると、この違和感には根拠がありました。生理前の肌では、皮脂が増える変化と、肌が乾く変化が同時に起きています。
生理前は、肌にとってどういう時期か
生理前の一週間ほどは、黄体期と呼ばれる時期にあたります。排卵が終わったあと、次の生理が来るまでの期間です。この時期はプロゲステロンというホルモンが優位になり、エストロゲンは相対的に下がります。
皮膚には、エストロゲンを受け取る受容体があります。プロゲステロンの受容体もあります。つまり肌は、ホルモンの変化を受け取る器官のひとつです。周期にあわせて、皮脂の量、水分量、バリア機能、厚みまでが動くことが報告されています。肌の調子が月の中で上下するのは、気のせいではありません。
| 時期 | ホルモンの状態 | 肌に起きやすいこと |
|---|---|---|
| 生理後〜排卵期 | エストロゲンが高い | 水分量が保たれ、比較的安定しやすい |
| 排卵後〜生理前 | プロゲステロンが優位 | 皮脂が増え、同時に水分量が下がりやすい |
| 生理中 | 両方が低い | 刺激を感じやすく、ゆらぎやすい |
表にすると整然として見えますが、感じ方には個人差があります。生理前にほとんど変化を感じない人もいますし、毎月はっきり出る人もいます。自分がどちらかを知っておくほうが、一般論より役に立ちます。
いつから荒れて、いつ落ち着くか
荒れはじめるのは、生理の一週間ほど前からという人が多いようです。排卵のあと、ホルモンの状態が切り替わってから数日たったころにあたります。
生理が始まると、数日で引いていくことがほとんどです。ただ、生理中も肌はゆらぎやすいままです。ニキビが引いたあとも、かさつきやしみる感じはしばらく残ることがあります。
排卵日のころに荒れると感じる人もいます。この時期もホルモンが大きく動くので、不思議なことではありません。周期の長さは人によって違うので、「生理の何日前」より、自分の記録で確かめるほうが確かです。
あごやフェイスラインに出やすい
大人の女性のニキビは、あごの下やフェイスライン、首のあたりに出やすいとされています。思春期のニキビがおでこや鼻に多いのとは、少し違います。
この場所は、頬づえやマスク、髪の毛など、手やものが触れやすいところでもあります。生理前に増えたニキビを触ってしまうと、炎症が長引いたり、痕が残ったりしやすくなります。気づくと触っているという人は、まずそこから意識してみてください。
皮脂は増えるのに、水分は減っています
ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。生理前の肌では、皮脂の分泌が増えます。それと同じ時期に、角層の水分量は下がり、水分の蒸発量は上がります。バリア機能が少し弱っている状態です。
表面に油分はあるのに、その下は乾いている。インナードライと呼ばれる状態に近いことが、毎月一定の期間だけ起きていると考えるとわかりやすいかもしれません。
ニキビができやすくなるのも、皮脂の量だけの話ではありません。バリアが弱っているところに皮脂が増えると、毛穴が詰まりやすくなり、炎症も起こりやすくなります。二つの変化が重なることが問題なのであって、皮脂が単独で悪いわけではないのです。
皮脂対策だけに寄せると、うまくいきません
この時期にやりがちなのは、皮脂とニキビを見て、落とす方向にケアを寄せることです。洗顔の回数を増やす。さっぱりしたものに替える。ベタつくのが嫌で保湿を減らす。気持ちはよくわかります。ただ、もともと水分が下がっている肌からさらに水分を奪うことになります。
| やりがちなこと | 置きかえたいこと |
|---|---|
| 皮脂が出るので洗顔を増やす | 回数は変えず、泡でなでるように洗う |
| さっぱりタイプに総入れ替えする | いつものものを続け、量だけ少し調整する |
| ベタつくから乳液やクリームをやめる | 薄く、荒れやすい場所を避けて続ける |
| 気になって何度も触る、つぶす | 触る回数を減らし、炎症には薬を使う |
生理前の一週間は、変えないことがケアになる
結局、やることを増やす話ではありません。むしろ逆で、いつもやっていることを崩さないだけです。洗いすぎない。保湿を落とさない。刺激の強いものを新しく足さない。炎症が出ているところだけ、必要なら薬で手当てする。それくらいです。
もうひとつ、記録をとることをおすすめします。カレンダーやアプリに、荒れた日と場所をメモしておく。二、三か月分たまると、自分の周期のどこで荒れるかが見えてきます。そうすると、荒れてから慌てるのではなく、その数日前から保湿を厚めにしておく、という先回りができます。
生活のなかで見直せること
スキンケア以外で手をつけやすいのは、睡眠と紫外線です。生理前は眠りが浅くなったり、だるさで夜更かししたりしがちです。いつもより少し早く寝るだけでも、翌朝の肌の様子が違うことがあります。
ニキビのあとは、紫外線を浴びると茶色い痕として残りやすくなります。荒れている時期こそ、日焼け止めは休まずに続けてください。しみるときは、肌あたりのやさしいタイプに替えてもかまいません。
生理前は甘いものが欲しくなる、という人も多いと思います。血糖値が上がりやすい食事を控えたグループでニキビが減ったという研究はありますが、対象は若い男性で、生理前の肌荒れを調べたものではありません。我慢を重ねるより、食事の量とバランスが極端に崩れないようにするくらいで十分です。
ひどいときは、どこに相談するか
炎症の強いニキビが毎月続く、痕が残りそうだという場合は、皮膚科で相談してください。ニキビは皮膚科で保険の治療を受けられる病気です。市販薬でしのぐより、早く落ち着くことが多いです。
肌荒れ以外の症状も重い場合や、生理前の不調で日常生活に支障が出る場合は、スキンケアの範囲を超えています。月経前症候群は月経のある人の二割から四割にみられると報告されていて、めずらしいことではありません。婦人科では、ホルモンの薬を使う選択肢も含めて相談できます。合う・合わないや副作用もあるので、医師と話しながら決めてください。
よくある質問
生理前だけ化粧水がしみるのはなぜですか
この時期はバリア機能が下がりやすく、外からの刺激を感じやすくなります。同じ化粧水でもしみることがあります。しみる間は使用を控え、肌が落ち着いてから再開してみてください。
生理前は洗顔を増やしたほうがいいですか
基本的には増やさないほうがいいと考えています。皮脂は増えていますが、同時に水分量は下がっています。洗う回数を増やすと、その乾燥をさらに進めることになります。
生理前より、排卵日のころに荒れるのはおかしいですか
おかしなことではありません。排卵のころもホルモンが大きく切り替わる時期です。荒れる時期が人と違っても、毎月同じころに繰り返すなら、それがあなたの周期のリズムです。記録をつけて、その数日前から保湿を厚めにしてみてください。
毎月ニキビができるのは、ホルモンの異常でしょうか
周期にあわせて肌の状態が変わること自体は、生理的な反応です。ただ、量が明らかに多い、痛みや痕を伴う、周期が乱れているといった場合は、一度医療機関で相談する価値があります。
Grain Note
毎月おなじ場所が荒れるなら、それは肌の問題というより、体のリズムの現れかもしれません。
生理前の肌荒れは、その週だけをなんとかしようとすると空回りしがちです。荒れる時期があるという前提でスケジュールを組んでおくほうが、気持ちも楽になります。今月荒れたからといって、ケアが間違っていたわけではありません。
Grain Evidence
生理前にニキビが増えることは、実際に数えて確認されている
18〜44歳でニキビの治療を受けていない女性を対象に、二周期分にわたって顔のニキビの数を数えた研究があります。その結果、63%の人で生理前に炎症性のニキビが25%増えていたことが報告されました。実感として語られてきたことを、はじめて定量的に示した研究です。人数の限られた症例集積研究であり、全員に同じことが起きるわけではありません。
Lucky AW. "Quantitative documentation of a premenstrual flare of facial acne in adult women." Arch Dermatol. 2004. (PMID: 15096370)
黄体期には、バリア機能の指標が下がる
18〜65歳の女性81名を対象に、経表皮水分蒸散量と角層の水分量を測定した2025年の研究では、排卵期にくらべて黄体期中期のほうが水分蒸発量が高く、水分量は低いことが示されました。皮脂が増える時期に、肌そのものは乾きやすくなっているということです。ただし対象人数は多くなく、この分野の研究結果はまだ一致していないと同論文も述べています。
Nikoletić ĐC, et al. "Menopause, Menstrual Cycle, and Skin Barrier Function." Skin Res Technol. 2025. (PMID: 40583043)
皮膚はホルモンを受け取る器官のひとつ
月経周期にともなう生理的変化をまとめたレビューでは、皮膚の真皮と表皮の両方にエストロゲン受容体があり、程度は小さいもののプロゲステロン受容体も存在することが整理されています。皮脂の分泌、皮膚の厚み、水分量、バリア機能、真皮のコラーゲン量が周期の影響を受けるとされています。レビュー論文のため、もとになった研究の規模や質にはばらつきがあります。
Farage MA, et al. "Physiological changes associated with the menstrual cycle: a review." Obstet Gynecol Surv. 2009. (PMID: 19099613)
周期のなかで、皮脂・水分・毛穴が動く
ホルモンの影響を受けやすいニキビ肌を対象に、月経周期の各時期で肌の状態と皮膚常在菌を調べた研究では、水分蒸発量・皮脂量・水分量・毛穴の容積に周期による違いが見られたことが報告されています。中国系とコーカサス系の集団で異なる傾向も観察されました。集団ごとの差が大きく、そのまま日本人に当てはめられるものではありません。
Hrapovic N, et al. "Clinical and metagenomic profiling of hormonal acne-prone skin in different populations." J Cosmet Dermatol. 2022. (PMID: 35810346)
大人の女性のニキビは、顔の下半分に出やすい
大人の女性のニキビについての専門家のレビューでは、赤く腫れるタイプのニキビが、あごの下・フェイスライン・首に目立ちやすいことが整理されています。程度は軽度から中等度のことが多い一方、治療に時間がかかることもあるとされています。レビュー論文で、生理前の悪化だけを扱ったものではありません。
Dréno B, et al. "Adult female acne: a new paradigm." J Eur Acad Dermatol Venereol. 2013;27(9):1063-1070. (PMID: 23302006)
食事とニキビの関係を調べた試験
ニキビのある15〜25歳の男性43名を対象にしたランダム化比較試験では、血糖値が上がりにくい食事を12週間続けたグループのほうが、ニキビの数が多く減ったと報告されています。体重の減少も同時に起きており、食事そのものの影響と切り分けきれていません。女性や生理前の肌荒れを対象にした研究ではない点にも注意が必要です。
Smith RN, et al. "A low-glycemic-load diet improves symptoms in acne vulgaris patients: a randomized controlled trial." Am J Clin Nutr. 2007;86(1):107-115. (PMID: 17616769)
月経前症候群はめずらしいものではない
月経前症候群(PMS)と月経前不快気分障害(PMDD)についてのレビューでは、PMSは月経のある人の20〜40%にみられるとされ、代表的な症状のひとつとしてニキビが挙げられています。肌荒れが単独の悩みではなく、だるさや気分の変化と一緒に起きることも多いということです。症状が重い場合は、スキンケアの範囲を超えて医療機関に相談する対象になります。
Itriyeva K. "Premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder in adolescents." Curr Probl Pediatr Adolesc Health Care. 2022. (PMID: 35534402)
Grain Pick
生理前に見直したいのは、皮脂を取るものより水分を保つほうです。キュレルの潤浸保湿 化粧水 III とてもしっとりは、セラミド機能成分を配合し、ゆらぎやすい時期の肌に水分を補う設計になっています。
この時期だけ替えるというより、普段から使っているものを崩さないために選ぶ一本です。
赤みや炎症をともなうニキビが出たときは、そこだけ手当てするほうが早いです。イハダ アクネキュアクリームは、抗炎症成分と殺菌成分を敏感肌にも配慮した処方でまとめた第2類医薬品です。
広い範囲に塗り広げるのではなく、気になるところだけに使ってみてください。繰り返す場合や炎症が強い場合は、皮膚科への相談も検討を。



